YouTubeに「認知症ポジティブおばあちゃん」というのがあります。
最近、知りました。
ご家庭での「認知症」と言われる方の日常が、あたたかく撮られています。
この「病気」に対する理解と対応の仕方も示唆されています。
ご存知ない方は、ぜひ、一度ご覧になってみられたらいかがでしょうか。
「マンガ 認知症」という本に「認知症」の日常行動の疑問からその行動の疑問を解いていくという方法が載っていました。
大変わかりやすいように思えましたので、内容の項目をいくつかご紹介したいと思います。『マンガ 認知症』(ニコ・ニコルソン/ 佐藤眞一 著 ちくま新書)
Q 1「お金を盗られた」「強盗にあった」と言うのはなぜ?
〇考えられる原因」
記憶障害、見当識障害、論理的思考の障害
〇発生頻度を増やす誘因
不安感、孤独感、疎外感、不信感
対 応
①「お金は大事だよね」と同意しつつ、探すように促す。
② 介護者が疑われないよう、本人に見つけてもらう。
③ あまりに興奮しているときは声をかけず、静まるまで距離をとる。
なぜ、あなたが疑われるのか? → 単に、一番身近にあなたがいるからです。
「物盗られ妄想」は、
「認知症」の代表的なBPSD(行動・心理症状)
『中核症状』
認知機能の障害・・・「認知症」の人なら脳機能の低下により必ず出る障害
・学習と記憶
・言語
・知覚・運動
・複雑性注意
・遂行(実行)機能
・社会的認知
『中核症状』に伴って現れる症状や行動 → 「BPSD]
・物盗られ妄想が起こる
・料理の味付けがおかしい
・無気力になる
・うつ傾向になる
・暴言・暴力
・入浴、食事、外出の拒否
・幻覚、妄想
・話のつじつまが合わない
・徘徊
・弄便、失禁 など
BPSD(行動・心理症状) は、その人の心理状態や環境によって症状が違う
中核症状はあっても生活に支障がなければ、問題ない。
なぜ「盗った」と思うのか?
まず、「記憶障害」が考えられる。
…自分がお金を置いた場所を忘れる → 自分のせいだとは認めたくない
→ 虚記憶を作る → 娘に盗られた
現実(リアリティ)の観察(モニタリング)ができない
「作話」… 自己防衛で虚記憶を作ってしまう
拒否を続けると、どんどん妄想が妄想を呼び、虚記憶が重なって悪化する
認知症の人の言葉にはその人の人生が現れる。
認知症の人の気持ちを想像して寄り添う
Q 2 同じことを何度も聞いてくるのはなぜ?
〇考えられる原因
記憶障害
〇発生頻度を増やす誘因
わからないという不安感、
知りたいことがわかった時の安心感
対 応
① 後で確認できるよう、返事をメモの形で残す
② (食事をしたかどうかという質問なら)
食べたあとの食器をかたづけずに置いておく
③ 拒否されていると感じさせてしまうので、
「さっきも聞いたでしょ」と返すのはさける
記憶障害
アルツハイマー病では海馬(側頭葉内側)から萎縮が始まるため、
陳述記憶のうちのエピソード記憶を
短期記憶から長期記憶に移行するという機能が
認知症の初期から低下する。
つまり
アルツハイマー型認知症の人は、そもそも自分が体験した出来事(エピソード)を覚えていない
一方で
長期記憶に保存された記憶については、失われる速度はゆるやか。
アルツハイマー型認知症の場合、もっとも覚えにくいのは数分から10分ほど前の記憶と言われている。
符号化、貯蔵、検索ーの3つのプロセスからなる記憶
「覚えて、貯蔵して、思い出す」プロセス
思い出すは、思い出すたびに再構成され、新しい記憶になっている。
展望記憶 ー 先の計画の記憶 つまり 手帳に書くスケジュールのようなもの
遂行(実行)機能障害によって、
目標を設定して計画を立てることができなくなってしまう
今日は何をする日なのか、次は何をすればいいのかわからない
→ 不安にさいなまれる
★ 次は何をするのかわかるように話かける
「今日は病院に行く日だよ」
「もう少ししたらお昼ごはんだよ」
認知症の人の心を知ることで、介護する側とされる側のすれ違いを減らしていくことが、よりよい介護への道
Q ③ 突然怒りだすのはどうして?
〇考えられる原因
抑制機能の低下、パーソナリティ、体内時計の障害、論理的思考力の低下
〇発生頻度を増やす誘因
何かしらの刺激、周囲の環境、疲労感
対 応
① 褒める&苦労話を聞く。会話は基本アゲアゲで
② (夕暮れ症候群がある場合)
来客の予定は夕方にセッティングしてみる
③ 怒りだしたら距離をとることも有効
夕方になると感情が高ぶる「夕暮れ症候群」
「人が変わったように怒りっぽくなった」
「言葉が乱暴になった」
脳の萎縮は海馬から始まって側頭葉へ、そして頭頂葉や前頭葉を含む大脳皮質全体へと徐々に広がっていく
抑制が効かないのは
前頭葉の機能障害が原因
それに伴い、注意機能も低下し、気が散りやすくなる
「人格の変化」といわれるような
社会のルールから逸脱した行動、他者への共感が欠如した言動が現れる。
前頭側頭型認知症は、比較的若年に多い。
お話を聞いてみると
「理由はないんだけど、とにかく怒りが込み上げてくる」
自分でコントロールできないし、理由もわからない。
別に何もきっかけがなくても、怒りが込み上げてくるそうです
「夕暮れ症候群」
この時間帯になると、朝から活動してきた脳が疲れてしまうせいではないか(著者)
夕方は、一番忙しい時間帯で、誰もかまってくれない
会話が重要
日常的な会話は記憶障害があり、難しい点がある
昔のことを聞くと話がはずむ
時には放っておくことも有効
「応用行動分析」とは
「問題があるときは近寄らない、落ち着いているときに近寄る」方法。
Q 4 高齢者の車の事故はなぜ起きるの?
〇考えられる原因
注意力の低下、作動記憶の衰え
〇発生頻度を増やす誘因
老化による体の衰え、焦り
対 応
① 車の運転でひやっとすることがあったら、認知機能の検査を受けてもらう
② 会話をするときは、相手の正面(有効視野の範囲)に立って話す
③ いつもできていることならば、心配になっても横から口を出さない
「有効視野」が狭くなる
有効視野・・・目に入る範囲(周辺視野)の中で注意を向けることができる範囲のこと
認知症になると有効視野はさらに狭くなり、注意力の衰えも大きく関わってくる
「注意」
・焦点的注意 → 特定の対象に意識を集中させること
・持続的注意 → 何かに注意を向けた状態を続けること
・選択的注意 → 様々な情報から何かを選んで注意を向けること
(それ以外を抑制すること)
・分割的注意 → 複数の物事に同時に注意を向けること
高齢でも、認知症でも焦点的注意と持続的注意はさほど低下しない
選択的注意と分割的注意は顕著に低下する
わたし達は、無意識に注意の選択と抑制をしている
高齢になれば、足の老化や判断の遅さが出る
認知症の場合は、そもそも危険を察知できないことが問題
人が同時に作業できるのは、
一般成人で3つか4つまで、高齢者は2つ、認知症の人は1つまでといわれている。
自動車の免許返納の判断は難しい
認知症の人でも
通勤や通院など同じ道を運転する場合は手続き的記憶になっているので半自動的に運転ができてしまう
Q 5 介護に疲れ果てました。どうしたらいいですか?
〇 考えられる原因
疲労、ストレス
〇 発生頻度を増やす誘因
心の理論の喪失
対 応
① 周りの人に助けを求める
② してあげるばかりでなく、簡単なことをしてもらう
③ 話かけるときは、正面から笑顔で!
介護が辛くなる大きな理由の一つ
「心の理論」が失われること
心の理論とは
他者には自分と異なる心があることを理解し、他者の心の動きを推察すること
認知症になると
社会的認知が低下し、相手の表情や言葉、身振りから心の中を推察することが難しくなる → 心の理論を失う、と言う
認知症の人の気持ちがわからなくて困っています
→ 認知症の人たちもあなたたちの気持ちがわからないんですよ
表情認知
嫌悪、敵意、不安、驚き、悲しみ
アルツハイマーの人の表情認知であまり悪くならないのが
「喜び」と「嫌悪」
だから、話すときは、なるべく笑顔で、認識しやすい正面から向き合う、相手にいい印象を持ってもらえば会話も増えます。
介護を生きがいにしない
一人で介護を抱え込んでいる人は心に余裕がなくなり、ケアしようという気持ちも薄れてきてしまいます。
2020年に始まった介護保険は、介護で家族を抱え込まず、社会科しようという考え方から生まれました。
外に目を向けてみれば、介護を支えてくれる仕組みはいろいろあります。
まわりの人がサポートしたり、専門家の助けを借りたりすることを考えてみてください。
介護は
「本人の状態が楽になれば、家族も楽になる」というのが私の(著者)の信念です。
介護でへとへとになっている人が、何らかの解決法見つけられますように。
その一助になればと、書いてみました。
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