emilyroom’s diary

徒然なるままにブログ

六代目菊五郎

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土門拳「風貌」 (講談社)より

 

 いつも土門拳氏の写真には、心打たれるのですが、六代目菊五郎の写真には、釘付けになりました。

 この一枚の写真だけで、六代目が名優であることがわかります。

 何と所作の美しいこと。

 衣擦れの音さえ聞こえてきそうです。

 

 六代目について語るほど、歌舞伎に詳しいわけではありませんが、六代目の映像はないかと探しました。少しだけど、YouTubeで見つけることができました。

 

 六代目は、歌舞伎は、「着物を着ていた時代のものだ」と言っておられるのを何処かで目にしました。もう一度読み直したいと思いましたが、探しきれません。

 思い違いだったら申し訳ありませんが、この言葉は深く心に刺さりました。

 ほとんどの人が洋服を着るようになったら、着物の所作が持つ意味などわからなくなっていくことを教えられました。

 恥ずかしながら、私はその筆頭の一人です。

解説など読んで「ふんふん」と納得するのが関の山です。

 最近、着物の着付け教室が流行っているようです。たまにでも着るようになると、どこかの一片に触れることができるでしょうか?

 

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(写真を撮った日は)

 

 昭和24年(1949)3月30日、芸術院会員と天皇との会議が宮中にあった。

 その日の夕方、僕たちは柳沢健氏に連れられて、新橋演舞場の近くに新築された六代目の家に行った。……。

 … 、六代目はこの日の光栄を父五代目菊五郎と伯父九代目団十郎の墓前へ報告に回ったとのことだった。やがて、帰って来た六代目は非常に興奮していられた。

喜びに溢れている感じだった。

話は自然今日の宮中での思い出話になったが、六代目は天皇との会談を心から光栄に思い、感激に浸っている風だった。… 

六代目の皺がれ声の仕方話(しかたばなし)を聞くと、その場の情景が眼に見えるようだった。何か立ち回りの話になった時、六代目は扇子を眉間に振り上げたが、ハッとするような美しい姿だった。

 

 六代目は、その後病床に臥す身となり、一進一退の後、遂にその年、7月10日に亡くなった。

 

 六代目の戒名は、

芸術院六代尾上菊五郎居士と付けられた。

 

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