emilyroom’s diary

徒然なるままにブログ

横綱 曙の苦衷   Yokozuna Akebono

内館 牧子さんによると、

曙は深く豊かな人間で、品性を備えていた

庄之助は言っていたと書いてある

   「毒唇主義」(内館牧子 著)潮文庫

 

 

あの、内館さんが言うんだから、間違いない。

 

実は私も、曙がプロレスラーになって、刺青をいれた姿を見たとき、「こりゃ、だめだ」と思った一人です。

 

「やっぱり、外人力士には相撲の心を理解するのは無理だったんだな」と、「相撲」をしらないくせに、いっちょまえに嘆いてみたりしました。

 

でも相撲を愛してやまない女性のおかげで、曙も、「相撲」も命をつなぎました。

 

現在、元曙関は、ステーキハウス「曙ステーキ」を夫人に任せ、大病後(急性心不全)のリハビリに励んでおられるそうです。

2013年に東関部屋に招聘されて以降、師範代を務めていました。

相撲界との縁は切れていませんでした。

 

・・・

 第64代横綱の曙が、角界を去り、K-1に新天地を求めたとき、何と無謀なことをと思った。

 相撲もK-1も「格闘技」というカテゴリーに入るものの、技術的にはまったく重ならない。

また、瞬発力がモノを言う相撲に対し、K-1は3分間というラウンドを重ねて戦うわけで、持久力が必要だ。

・・・

 案の定、曙は負け続けた。それも目を覆うほどぶざまにマットに這い続け、「横綱」という天下の威信を打ち砕いた。

・・・実際「マケボノ」とニックネームがついたほどである。

 

2005年、九州場所後の横綱審議委員会で、委員の一人が言った。

「曙を『横綱会』から除名すべきだ」

横綱会」とは、過去の横綱経験者と現役横綱のみが会員になれる親睦団体で、後輩の指導に責任を果たすことを目的としている。

 発言した横審委員は、曙のぶざまな負けっぷりに加え、身体に彫られた刺青を問題にしていた。

・・・

 これでは「横綱を商売道具」にしたあげくに、横綱の弱さをPRしているようなものである。

除名発言は無理もない。

 

だが、私は、「もう少し様子を見ませんか」とお願いした。

いつもはきついことばかり言う私に、委員たちは怪訝な目を向けた。

 

様子を見ようと言った理由は数々あるが、

そのひとつとして

現役時代の曙が非常に真摯な姿勢で横綱を務め、かつ日本文化と精神文化に傷をつけぬよう、第28代木村庄之助の薫陶を仰いでいたことが挙げられる。

 

曙は初の外国人横綱として、

日本という国とその伝統文化に敬意を払い、非常に素直に言うことを聞いたそうだ。

 

他国の文化に自分を合わせることは、外国人として耐え難いものであったかもしれない。が、

曙は「横綱」の重みを理解し、それを乗り越えた。

 

私は強いだけの横綱を、横綱とは認めていない。

 

これらは横綱だけでなく、・・・

男も女も横綱も、求められるものは何よりも人間としての深さだろう。

 

庄之助が、

曙は深く豊かな人間で、品性を備えていたと言う。

それほどの人間が、新世界では横綱を売り物にするしかない苦衷を思う。

それを 乗り越えたとき、曙はさらに深さを備え、「横綱会」の力になるはずだ。

・・・

 

 

強い、カッコイイ、お金持ちだけで、人間は計れない。

「下品」な人間になってはいけない、横綱も、男も、女も。

相撲の話が、大きく「人間」の話になりました。

 

牧子はん、男前!

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