不安と折り合いをつけて
「うまいこと 老いる 生き方」
(54歳の精神科医・奥田弘美 92歳の精神科医・中村恒子 著)すばる舎
この本の帯に
「大丈夫、歳とるほど自由が待っています」とあります。
それなら、歳をとることも悪くないかも・・・
定年退職して、宮仕えの仕事から「解放」されたとき、
子どもが家を出て行き、子育てから「解放」されたと実感したとき、
しばらくの、空虚感、脱落感という空白時間を過ごしたあと、「自由」な時間が眼前に広がっているのを知ります。
これからは、時間がたっぷりあるとわかったら、あなたは、何を始めますか?
「後半生を 上機嫌に過ごすには、コツがいる」
とも、言われます。
精神科医のお二人が書かれた本から、ヒントをいただこうと思います。
マスコミで活躍されている人々で、長く活躍されているなあと思う人々、でも昔より
出演回数が少なくなっていると感じる人々は、90歳を超えていることが多くなりました。「ああ、もうこんなお年になっておられたのか」と感慨にふけることも度々です。
そして、お若いです。60歳代と言っても通用しそうです。
この本を書かれた中村恒子先生も、この時92歳で、少し前まで現役でした。
奥田弘美先生は54歳の現役の精神科医師です。いろいろとためになるお話がきけそうです。
第1章 老いを受け入れるほど人は幸せになれる
第2章 人間関係はどんどん手放していく
第3章 「これまで」や「これから」で頭を満たさない
第4章 「死」の向き合い方はちゃんとある
第5章 終着駅に笑顔で降り立つために
これに沿って進めていきたいと思います。
第1章 老いを受け入れるほど人は幸せになれる
・ いつまでも若くいられる時代だからこそ、老いるメリットを考えてみる。
「長すぎる未来に対する不安」
現役引退後も長く続く老後
「老い」をマイナスイメージだけで捉えない
「万事につけて歳をとると気が楽になる」
……私の頃は、結婚したら、もう「おばさん」扱いで、気楽なものやったわ(笑)。50代だと、もうおばさんどころか、おばあさん扱いされていたわな。(N)→中村先生 以下同様
……「おばさん」と開き直った方が、50代からは、絶対に楽ですよね。(O)→奥田先生 以下同様
アニメ サザエさん1969年に放送が始まる
フグ田サザエさんの年齢設定 24歳
お父さんの波平さん 54歳、 お母さんのフネさん 52歳
現代の私たちから見ると、サザエさんは30代ぐらいの、波平さんやフネさんは70代の雰囲気を醸し出していて、驚きます。(O)
……女性は「おばさん」男性は「おじさん」とひとくくりやった。(N)
……今は50代になるまで、若さを手放せないとは、えらい時代になったもんやな。
……えらく老いることが先延ばしになってしまっているんやね。(N)
「アンチエイジング」・・・「老い」に対抗する
‥‥私らの世代は、50歳になったらほとんどの人が「老境に入った」と開き直っていたから、老いることに対しての焦りや、不安はほとんど感じなかった気がする。(N)
‥‥今も私が身に付ける服や鞄なんかは、50代や60代の頃に買ったものが多いんやで。
‥好みに合うものを買ってきた。
‥流行と違って、自分の基本的な好みは、そう変わらへんからね。(N)
‥‥メディアや流行に左右されないで、自分の感性で、ものも、生き方も選んでいきたいと思いますね。(O)
・ 衰えるのは、人間として自然な営み。老いに抵抗し過ぎると、不幸になるだけ。
老いるってことは、当たり前で、自然なことなんやけどなぁ。(N)
‥‥今は豊かで贅沢な時代になって、お金さえ払えば見かけは取り繕えるから、何歳になっても若さや美しさが諦められないんやろうなぁ。(N)
年齢を自然に受け入れながら、お洒落やお化粧などは「アンチエイジングの苦しみ」を生まない程度に、ほど良く楽しんでいこうと思います。(O)
・ 主役から、脇役へ。新たな役割を受け入れるごとに、「素敵なお年寄り」になっていく。
‥‥外来で患者さんにアドバイスするときなんかは、この顔のシワ、シミの一つひとつが説得力を持っていた。(N)
‥‥大体人間は50歳過ぎたあたりから、見た目だけやなくて、体力も知力も、人生の盛りからゆるゆると下がって行くんやから、遅くとも60歳過ぎたら主役は若い人にどんどん譲っていかんと。(N)
・ 仕事も、子育ても、60代からは全く新しい景色が見える。
・ 気力・体力の右肩下がりも、悪くない。欲がなくなり、楽に生きられるようになる。
第2章 人間関係はどんどん手放していく
・ 人間関係は人を動かそうとするから辛くなる。諦めからスタートすれば万事解決。
・ 仕事というものは、自分が期待しなければ、向こうからも期待してくることはない。
今の人は相手に対して要望が多すぎるんやな。(N)
「自己実現の呪縛」を抱えている人が多い。(O)
気持ちが常に苦しくなるような目標は、ちょっと見直した方がええな。(N)
・ 大抵のことは「終わり良ければすべて良し」に落ち着く。それまでは拠り所で乗り切るべし。
たった一つでも心の支えや拠り所があると、大抵のストレスは乗り切ることができるもんや。(N)
・ 友達が多い方がいいというのは、思い込み。交友関係は広くなるほど、悩みも増える。
・ 人とわいわいやれるのは、才能の一つ。向いていない人もいるから大丈夫。
・ 人間は孤独が本来の状態。一人時間が自分を豊かにする。
・ たかが一人や二人に嫌われたところで、死ぬわけじゃなし。
・ 高齢者になると人間関係の疲れはなかなかとれない。人を選んで付き合うこと。
・ 印刷だけの年賀状は不毛なお付き合いの象徴。社交辞令の関係は徐々に清算していく。
第3章 「これまで」や「これから」で頭を満たさない
・ 漠然とした不安の原因のひとつは、不必要に自分と他人を比べていること。
・ 人は夜になるにつれ、不安になる生き物。あえて忙しくすることで、頭から追いだせる。
・ 明日の心配や昨日の後悔が止まらないときは、瞑想で心を「今ここ」に戻す。
・ 睡眠とバランスのとれた食事、それと夜のオフ時間が、心の栄養になる。
・ 自己嫌悪感に襲われたときは、「まぁ、しゃあないな」と諦め、さっさと寝る。
・ 同じ顔の人がいないのと同じように、他人の人生と自分のそれは、違っていて当たり前。
・ 人生の正解は、終わらないとわからない。だから目の前のことをせっせとやるしかない。
・ 体が、お世話しないと動かないように心もお手入れしてあげないと働かない。
失敗したときは、まず反省して、原因を分析して、次の機会に生かすことがベストです。ということは、次に向けて余力を残していないといけないはず。
であれば、「あのときは、あれがベストだったんだから、仕方ない」と自分にOKサインをだしてあげる‥‥(O)
「人生万事塞翁が馬」
第4章 「死」との向き合い方はちゃんとある
・「5年後、死ぬとしたら何をしておきたい?」問いかけておくことで、今が充実していく。
お迎えが来たら潔く逝こうということやな。(N)
‥‥「私はしたいことを精一杯やってきたから、自分の人生にはほぼ満足だ」と穏やかに死を受け入れて亡くなっていかれました。
「まだ死にたくない。もっといろいろしたいことがあったのに」と悔やみながら亡くなっていった70代、80代の方もいらっしゃって、
人生の満足度は年齢じゃないな、と強く感じました。(O)
・ やりたいことを後回しにしなかった患者は、人生の終わりも穏やかな笑顔をたたえていた。
やりたいことの先送りは、できるだけしない方がいいね。(N)
人の目ばかりを気にして、自分のしたいことを後回しにし続けるのは、精神衛生上も良くない。
‥‥人様に大きな迷惑かけない範囲でわがまましても、何も問題あらへん。
‥‥ぜひ私の世代の分も、自由に、自分らしく生きて欲しいと思うな。(N)
・ 趣味があれば老後が楽しいと思ったら間違い。体が動かなくなったときも想定しておく。
体が動くうちにできる楽しみや趣味はたっぷりしておく。(N)
「外で楽しむ趣味」と「家で楽しむ趣味」を持っておいたら、老後も楽しめるよ。
これからは、IT機器が使えるご高齢者の時代
体が動かなくなっても、IT機器を活用すれば、動画で会話を楽しめる時代
・ 孤独上手になるのは、難しくない。生活の一つひとつと丁寧に向き合うだけ。
私は若い頃から一人でいるのが平気やったからなあ
忙しくて、寂しがったり、人恋しくなったりする暇がなかった。
今は、逆に、工夫しないと時間が余ってしまう。」
昭和の時代はもっとゆっくりと時間が流れていて、手間暇かけて生活の一つひとつをやっていた気がするね。(N)
‥‥一つひとつの物事に時間と手間暇をかけて丁寧に向き合っていれば、おのずと一人で過ごす時間が長くなり、他人としょっちゅう接していなくても気にならなくなっていく。
➡ 一人で過ごす時間が平気になる ➡ 孤独に慣れる
第5章 終着駅に笑顔で降り立つために
・ 高齢者はいずれ向き合うときがくる延命治療。その実態をしっかり知っておく。
「延命治療は絶対にいらない」、人工呼吸も、心臓マッサージも不要
と、家族に伝えている。
医者や看護婦で、高齢者になってから延命治療を受けたいと言う人に今まで出会ったことがありません。
基本的に医療者が望まないような治療は、患者さんにもしない方がいいと思うのですが
日本の医療では今も多くの病院で、
高齢者への延命治療が行われています。
平均寿命を越えたような老人が延命治療を受けると、本当にろくなことがない。
たとえ命が助かったとしても
急激に運動能力が落ちるから、
ほとんどの人が寝たきりになる。
認知症も一気に進んでしまう
中心静脈栄養
胃ろう
日本では、高齢者が肺炎にならなくても、認知症や心不全など様々な要因で食事が口からとれなくなったあと、当たり前のように人口栄養が行われます。
・ ろうそくの炎が消えるような最後を迎えるには、「リビングウィル」を早めに用意しておく。
オーストラリアやオランダ、スウェーデンなどでは、認知症や寝たきりのご高齢者に人工栄養(経鼻や胃ろうなどの経管栄養、中心静脈栄養)は全く行われないそうです。
またオーストリア、スペイン、アメリカなどでも、かなり少ないそうです。
『欧米に寝たきり老人はいない』宮本顕二・宮本礼子 著(中央公論社)参考に
欧米や北欧にも、20年ぐらい前までは、日本と同じように老衰状態の高齢者に人工栄養を行っていた歴史があるんですね。
これらの先進国では、その歴史を経たうえで、「余計なことをすればするほど、終末期の苦しみを助長する」と結論づけられ、高齢者の自然死が推奨されるに至ったわけです。
スウェーデンでは、80歳以上で重症になった高齢者は、回復の見込みがないと判断された場合は、ICUにも入れないそうです。(O)
‥‥私ら終末医療に関わった臨床医の多くは、何十年も前から、高齢者が肺炎や心不全などの重体になったときには、家族に延命治療の苦しみをしっかりと説明して、できるだけ人工呼吸器を使うのは避けてきたのにな。(N)
多くのご家族は、
「楽に人間らしく、最後を迎えさせてやって欲しい」と言われますよね。(O)
家族が延命治療を望んだら、医者も断れないからなぁ。
‥‥60歳ぐらいからは、家族にしっかりと自分の意思を伝えておいた方がいい。
意識がしっかりしているうちに、ご本人が家族にしっかりと伝えておくべきですね。
「日本尊厳死協会」のリビングウイル
自分で自由に書いたものでも良い
リビングウイルは書いたら必ず家族に
内容と置き場所を知らせておき、
いざというときに医師に提示しておけるようにしておく必要があります。
・ 孤独死、けっこう。大勢に看取られても、一緒にあの世に来てくれるわけじゃなし。
・ お葬式やお墓は、しょせん遺された人たちのもの。死んだあとのことには、こだわらない。
・ 「児孫のために美田を買わず」。子どもたちに遺すべきはお金ではなく、知恵。
・ 92年間生きてきた恒子先生が、最後に伝えたい「人生のケジメ」
自分の手足、頭が自由に動かなくなったときに、できるだけ家族が困らないように、余計な心配をかけないようにしておいてあげることが、
年寄りとしての最後の思いやり、人生のケジメやね。
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