emilyroom’s diary

徒然なるままにブログ

自然死を知る ⑴

 

 〈 理想の最期 〉

 

「自宅で看取ってもらいたい」と多くの人は答える

一方で

 病院などの医療機関でたくさんの管につながれて苦しい思いをしながら亡くなっていくケースが8割を占めると、長尾医師は書いておられる。

 

 延命治療は望まないと言いながら、いざその時がくると前言を翻し家族が「治療」をお願いすることはよくある。

 

 かつて、施設で働いていた時 

「この方は、自然死を希望されてます。」

と、言われたことがあった。

そして、延命治療は望まないとサインしてあっても、「自然死」を迎える入居者をほとんどみていないと思う。

 

 その時も、「ウウッ」とかうめき声をあげられると、「苦しいのではないか」とか、「何か言いたいことがあるんじゃないか」とか思うし、身体を動かされると「痛いんだろうか」「何かしてほしいことがあるんだろうか」と、心が千々に乱れる。

 ご家族の方は尚更だろうと思う。

 

 長尾和宏医師は、医師になって10年目に初めて≪自然な死≫を目の当たりにしたと言われる。

 

                       ★ 長尾和宏:元・長尾クリニック名誉院長、

            (公財)日本尊厳死協会副理事長

 

「自然な死」を選ぶと

 

例: 50代の食道がん末期の患者の場合

「何もしないでください」といわれる。

 

検査をすると:食堂が狭くなっており、かろうじて水が少し飲めるくらいの症状

普通なら:胃カメラでステントという管を入れる

が、拒否される

食事も摂れないので髙カロリー点滴を試みる

が、それも拒否される

これではすぐに死んでしまうだろうと思っていた。

ところが、2か月経っても、

水を少しだけ飲んで超元気に過ごしている

 

点滴もステントもしない末期がんの人が元気にしている

3ヵ月目くらいになると急速に弱って、3日ほどベッドに寝付いたあと、枯れるように亡くなられた。

 

 長尾医師は、

1955年、阪神淡路大震災が起こり、まっさきに現地で診察にあたる.

 

雑居ビルでクリニックを開業。

雑居ビルの大家さんが肝臓がんで入退院を繰り返していた。

「ちょっと診てくれない?」と言われてご自宅を訪問。

在宅医療が始まる。

当時まだ在宅医療という言葉はなかった。

 

例:クリニックの大家さん:肝臓がん 口から食事はできない状態。

→基本的に点滴はしない、

黄疸があり腹水が溜まっていた。

→腹水を抜かない……在宅医療で、看護師さんがいない

→だんだんお腹がしぼんできて、腹水を抜く必要がなくなる。

→2ヵ月くらいすると枯れるように亡くなる。

 

末期がんの人が、

食道静脈瘤の破裂や胃潰瘍からの吐血、お尻からの出血(下血)もなく

死を迎えた。

 

例:胃がんの患者さん(在宅医療)

食事ができない

→何もしない……髙カロリー点滴をしない

モルヒネなど医療用麻薬を全く使わず

→枯れるように亡くなる

 

 終末期には、過剰な医療を行わず自然に任せれば、大きな痛みが少ないので医療用麻薬もあまり使いませんし、血も吐きません。

 そして最後まで何かを口から飲んだり食べたりすることができるのです。

                   (長尾医師)

 これこそが、私たちが望んだ死の迎え方ではないだろうか。

 希望しながらも、叶えてやれなかった死の在り方だと思った。

 

 言葉を選ばずに言うならば

「たとえ終末期の患者であっても死亡させたら負け」

という病院医療

病院では、

延命治療のフルコースを受けることになる。

 

いくつもの管をつないで命を長らえようとする。

食べられなければ 良かれと思って……点滴、胃ろう

  点滴にはブドウ糖が大量に入っているーガンの大好物→腫瘍が大きくなる

 最期の時に水分や栄養をたくさん体に入れてしまうと、顔や体がパンパンにむくんで苦しみながら死ぬことになる。

 

恐らく、見守っている私たちは、「最期まで診て下さった」と感謝する。

医者側も家族側も「善意」から患者を苦しめる延命治療をしている。

お互い「良かれ」と思って、患者さんを「苦しめ」ている。

何という皮肉!

 

やはり、実態を「知らない」ことが、このような事態を招いていると思う。

この本では「病院での死」「自然死」(「平穏死」)について、わかりやすく書かれている。

 

欧米では、

緩和医療とは脱水状態にすることだ」と明言。

脱水といっても人工的に水分を抜くわけではなく、

脱水を容認する」ということ。

日本ではそういう教育が全くできていない。

 

 「死」について語ることは、タブー視されている空気がある。

結局のところ、何となく「タブー」という雰囲気があり、

「治療が患者さんを苦しめている」ことに向き合うことを遅らせているように思う。

 

 「自然死」を知り、枯れるように亡くなることを希望される方には、良い手引きの本になると思う。

 

 ・・・⑵ へ続く

 

 【長尾和宏医師】東京医科大学卒業。聖徒病院、市立芦屋病院等での勤務を経て、1995年兵庫県尼崎市に「長尾クリニック」を開業。あえて≪町医者≫にこだわり、地域の在宅医療を担う先駆者として活躍。2023年65歳で退職し、現在はメディア出演や講演会などを通して医師の教育やボランティア活動に専念している。

「平穏死10の条件」ほかベストセラー著書多数。

柄本ゆう主演で映画化された「痛くない死に方」は第22回上海国際映画祭へ特別招待され話題に。

 

<Renaissance Vol.17   間違いだらけの日本医療〉

「多死社会を生き抜く≪平穏死≫の条件」より(長尾和宏)

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

自然死を知る。