emilyroom’s diary

徒然なるままにブログ

キンセン  谷川俊太郎の詩

         ♪  ♪  ♪  ♪  ♪

 

キンセン

      谷川俊太郎

 

「キンセンに触れたのよ」

とおばあちゃんは繰り返す

「キンセンって何よ?」と私は訊く

おばあちゃんは答えない

じゃなくて答えられない ぼけてるから

じゃなくて認知症だから

 

辞書を引いてみた 金銭じゃなくて琴線だった

心の琴が鳴ったんだ 共鳴したんだ

いつ? どこで? 何が 誰が触れたの?

おばあちゃんは夢みるようにほほえむだけ

 

ひとりでご飯が食べられなくなっても

ここがどこだか分からなくなっても

自分の名前を忘れてしまっても

おばあちゃんの心は健在

 

私には見えないところで

いろんな人に会っている

きれいな景色を見ている

思い出の中の音楽を聴いている

 

♪  ♪  ♪  ♪  ♪

 

認知症」のおばあちゃんは、かつて何処かで使った「琴線」という言葉を思い出した。

心が共鳴した、と教えてくれた。

 

 でも、私たちは忙しい。

詩人以外は、おばあちゃんの話を聞く時間がない、と思っている。

 

認知症」について考えていたら、「人間」について教えられた。

 

「キンセン」は、そんな詩です。

 

・ ・ ・ ・ ・

 

「父と娘の認知症日記」

   (長谷川和夫・南高まり著)中央法規 

  谷川俊太郎さんの詩…で知りました。

 

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