「長い老後をいかに楽しむか 8」
高齢寿命を延ばす
「高齢者の栄養と食事」
監修 東京都健康長寿医療
センター研究所研究員
成田美紀
料理 管理栄養士
検見崎聡美
(池田書店)
高齢者にとって、食事はどんな意味を持つのでしょうか?
最近は、肉が長寿に関係があるといわれるようになりました。
長寿の方が、肉が好物でよく食べておられることがわかったからです。
グループホームにおいては、まず、全量食べていただいているか?、水分摂取は充分か? 嚥下がうまくいくように、工夫はされていたか? などをチェックします。
最近は、業者の加工食でも、見栄えも、栄養もよく考えられているようです。
季節感も盛り込まれています。
できることなら、健康で、長生きしたいものです。
「健康で長寿」 → 「健康長寿」
今回は、健康長寿について、取りあげてみました。
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健康長寿はどうすれば手に入る?
健康寿命 : 健康上の問題がない状態で、日常的に過ごせる期間のこと
平均寿命 男性・80歳
女性・87歳
男性・平均寿命 ー 9年
80歳ー9=71歳
介護、看護が必要となる
女性・平均寿命 ー 12年
87歳ー12=75歳
介護、看護が必要となる
あくまで、平均値ではありますが、10年近くは何らかの介護が必要になると考えられます。
健康長寿の条件
⓵ 栄養状態がよい(体に必要な血液中のアルブミンやコレステロールの値が高い)
② 筋力が強く、歩行速度が速い
③ 仕事や人との付き合いなど、社会的な活動をしている
・・・老化予防と関係が深い
栄養状態は生存率にも影響する
「少し太め」は「やせ」よりも長生き
BMIが20以下の低い人(やせている人)は、「少しやせている人」「少し太っている人」「太っている人」より、生存率が低い
体格指数(体格のバランスがわかる指数/BMI)
血清アルブミン値(タンパク質がわかる指数)
総コレステロール値(脂質がわかる指数)
ヘモグロビン値(鉄・タンパク質がわかる指数)
を使い、それぞれ4つの群(高い、少し高い、少し低い、低い)に分けて8年間の追跡調査で累積生存率(何名生存しているか)を調べたもの
栄養不足は死亡リスクを高める
栄養不足 → 栄養素の不足
※ 総コレステロール値
本来、コレステロールは細胞膜の形成やホルモンの材料になるなど、体には欠かせない物質
→ 低すぎるのも問題
加齢とともに体は変化していく
体の衰えを感じたら食生活を見直すとき
噛む力や飲み込む力が低下
→ 食事量が減ったり食欲が低下し、栄養の偏りや不足につながる
「高齢者は粗食がよい」は間違い
病気ではないのに低カロリーの食事を続けていると、栄養不足(低栄養)になる可能性
高齢者がなりやすい低栄養とは?
要介護状態を引き起こす原因になる
・ エネルギーとタンパク質が必要
・ 低栄養は筋力の衰えを招く
・ 低栄養が続くと要介護状態に
低栄養の主な原因は3つある
生活環境や心理面も低栄養の要因に
・ 孤食や偏食に注意が必要
⓵ 身体的な要因
歯の本数が減ったり、入れ歯が合わない
→ 肉や繊維質の多い野菜を摂らなくなる
→ 白内障などが原因で食べ物の色がわかりにくい
→ 嗅覚が低下
→ 食欲減退
→ 体力や筋力の低下
→ 運動量の低下
② 社会的な要因
環境の変化(施設への入所、入院)
食事に関心がない
メタボリック症候群を警戒しすぎる
→ タンパク質や脂質を控える
③ 心理的な要因
一人暮らしの「孤食」
配偶者との死別
うつの症状や認知機能の低下
低栄養を早期発見することが重要
定期的に体重の変化をチェックしていく
・ 65歳以上の女性の約20%が低栄養
・ 体力の低下にも要注意
低栄養を防ぐ食事のポイント
1日3回、楽しく、栄養バランスよく
・ 主食、主菜、副菜、汁物をそろえる
さまざまな食品から多種類の栄養をとる
「1週間チャレンジシート」を活用する
・ 食品数が多いほど栄養も充実
・ 1日10品目を摂ることを目標に
高齢者は動物性タンパク質が不足しがち
卵を敬遠せず、1日1個をとる
・ 高齢者は肉の摂取が少ない
・ コレステロールを敬遠しないで
水分不足にも注意が必要
こまめな水分補給で脱水症状を防ぐ
・ 高齢者は脱水症状になりやすい
・ 経口補水液を利用しても
骨粗しょう症を防いで骨を強くする食事
カルシュウム、タンパク質、ビタミンD・Kの摂取が大切
・ カルシュウム、を効率よくとる牛乳、乳製品
骨の形成 - カルシュウム、タンパク質、ビタミンD・K
1日 700~800mg 必要
牛乳、乳製品、野菜(小松菜、切干大根等)
ビタミンD(鮭、サンマ、ひじき、シシャモ等)
ビタミンK、ビタミンB6、B12、葉酸、マグネシウム等の働き
・ 加工食品の摂りすぎに注意
リン(リン酸塩)や塩分を過剰に摂るとカルシウムの吸収を妨げる
低栄養は認知症のリスクも高い
鉄、脂質、タンパク質の低下が 発症リスクに
・ 栄養状態と認知機能の関係
認知症は、人の活動の「司令塔」である脳の機能が低下し、記憶や思考への影響がみられる病気
東京都健康長寿医療センターの調査より
⓵赤血球数、
②HDL(善玉)コレステロール値、
③血清アルブミン値が、認知機能の低下と関連している
・ 低栄養は認知機能にも影響
鉄(赤血球)
→ 脳に酸素を運ぶヘモグロビンの成分となる
HDLコレステロール値(脂質)
→ 脳に栄養と酸素を運ぶ血管を柔軟にする効果(脂質)
血清アルブミン値(タンパク質の状態)
→ 神経細胞や脳を機能させる神経伝達物質の材料になる(タンパク質)
低栄養になると、認知症になるリスクも高くなる
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これから、超高齢社会になっていくことの大変さをどれだけわかっているのか心配になります。(私も含めて)
施設では、栄養も考えられた「立派な」食事が提供されますが、少し気になることがあります。
食事をしながら、栄養のこと、病気のことを理由にあれこれ制限されることがあります。
介護される人は、主に80歳や90歳の方々です。
二度の大戦を生き延び、人生経験も豊富に積んで来られました。
介護する人より、人生の知恵を持っておられると思います。
今少し
制限より、「楽しい食事」を考えてみたらどうだろうと思う時があります。
もちろん、病気への対応は必要です。
でも、「好物はのどに引っかからない」といいます、そんな精神です。
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